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日本留学試験⑤ 日本語(二)

日本留学試験について書くシリーズです。

今日は「日本語科目」の中の「記述」についてです。

「記述」問題は選択ではなく、文字通り「記述」します。

猫 書く に対する画像結果

過去問題例

下記が、その「例」です。

他にもいくつか問題のパターンはありますが、細かい比較は専門家がわかってればいいことなので、ここでは下記で。

 

ある国が他の国を援助するには、必要な物や労働力となる人を送るという方法もあれば、知識や技術を教えてその国の人を育てるという方法もあります。

 他の国を援助する場合に、どのような方法で援助するのがよいと思いますか。上の二つの方法に触れながら、あなたの意見を述べなさい。

 

上記のような問題なのですが、必ずお題は二つあり、そのどちらかを選んで記述することになります。書きやすい方を選んで書けるようになっています。

400字、目安の時間は30分です。

500字まで許容されます。

 

試験で書いた解答を、受験大学は「見る」ことができる

「機構では、大学等に対して答案の写し(受験者自筆のもの)を評価と併せて送付しますので、大学等で定める独自の基準により、直接評価を行うことも可能です。」との文言が、「記述」試験の説明にあります。

留学生が大学受験をし、その大学が学生の留試受験番号を提出させておけば、大学は学生がその手で書いた文章をそのまま見られるということです。

これにより、学生がどれくらい日本語で文が生成できるか(すんません、ちょっと専門的な言葉を使っちゃいました)=ちゃんとした日本語の文が書けるか書けないかを大学側は見ることができ、それを入試の審査に加えることもできるということです。

 

採点

正確さか内容の魅力か

2010年に採点基準が変更になりました。

とはいっても、それ以前から

日本語の正確さ>作文、小論文としての良さ

という傾向は割とはっきりしていました。

「意味不明な日本語で魅力的」というのはないのです。

(`・ω・´)

ちゃんと、読んで意味が通じてこその論理性の採点、なワケです。

 

これは、私が以前勤めていたマンモス日本語学校の大学進学コースのクラス分けと、留試の点数の高低は大体一致していたので、採点基準はおおむね納得できるものであります。

その学校では、記述式の入試と、定期テストでもきちんと文法力を記述式のテストで計っていて、その順でクラス分けをしていました。

すると、この留試の記述の実際の点数が、ほぼきれいに分布がクラス順になっていました。(少々の前後はありましたが、大体、です)

 

内容について

次に、内容としては別にどっちの立場に立とうがそれについては問われません。

どういうことかというと

「大きい家に住むのがいいか、小さい家に住むのがいいか」というお題に対して、小さい家を選ぼうが、大きい家を選ぼうが、論理に一貫性があればそれで得点が出ます。

 

文体

「だ・である体」か「です・ます」で書くかによって点数は左右されてないようです。

30分400字、となると学生は字数が稼げる「です・ます」で書きたがります。

例えば「考慮せねばならない」と「考慮しなければなりません」だと、「なければなりません」の方が字数がかかるので、学生はこっちを選びたがります。

しかし、「です・ます」だと書ける文章が量的に少なくなってしまうので、しっかり書きたい内容を表現するには「だ・である体」でないと書ききれなくなってしまいます。

また、文章も格調が高いほうが点数が出やすいです。

小論文ですから「でも」「けど」のような話し言葉はタブーですが、例えば、

「しかし」よりは「しかしながら」や「にもかかわらず」といった表現の方が

お、こいつできるな!

(・∀・)

という印象になります。

 

漢字

漢字についてですが、漢字が苦手な留学生で、かなりの部分をひらがなで書いても減点はされてないようです。漢字を書かない学生だからといって点数が低いとは限らない、というのが現場で感じていたことです。

ただ、これも「財源」「ざいげん」では文字数が違うので、ひらがな主体だと内容が薄くなってしまいます。そこは考えたいところです。

 

文字の美しさ

「字のきれいさ」は、全く関係ないかというと、若干の関係はあると思います。「解読不能」はわかってもらえませんので。

あと、大学で参照される際には印象は少々あるかと思います。

文字の大きさが揃っているかどうか、マス目におさまっているかどうかは、見る人は見てるんじゃないでしょうか。

ただ、字がきれいならそれだけで合格、とはなりませんよね。

 

点数

国公立大学に合格してる学生は大抵50点満点の40点以上取ってると思います。

 

小ネタ

私も実際にこの「留試」の記述試験の授業を何度も受け持ちました。

指導して成功したケースは、

1.2か月で6~8回書かせた

2.不要な文は書かない、を徹底

よく学生は問題文をもう一回書いちゃうんですよ。それはダメ。

あと、自分は日本に来てどのくらい経ったとか、「書け」と言われてる内容と関係ない文も不要。

こういう「不要」を学生にはっきり言うと、結構学生は落ち込んじゃうんですが、それに妥協しなかった時のほうが点数は上がりました。

3.「だ・である体」+漢語は多め+書き言葉を使う+教養を身につけておく

小論文には「知識」が必要なのです。「世界人口は10億」みたいな非常識は、いくら何でもがっかりです。

4.最も書きたいことを冒頭に

5.粒のそろった文字で30分以内、最後の結論まで書く練習をしておく

といった指導ができた時には、50点満点も出ましたし、全体に高得点を得ることができました。

 

やる気は不可欠

学生の「やる気」は前提ですよ。

「ちょっとでも授業サボってやる!」

「授業の邪魔してやる!」

「無理で――す!書けませーん」てな学生ばかりでは、先生一人が踊っているだけです。(>_<)

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仔羊おばさん