日本留学試験は主に日本の大学に進学したいと考える留学生が受験する試験です。
まあいや「センター試験」みたいなもんです。
もし「大学に進学したい」と言いながらこの試験を受けようとしない留学生がいたら、直近の入試には挑戦しないつもりかもしれません。
センター試験には「英語」がありますが、日本留学試験には英語科目はありません。
「日本語」があります。
英語については、国公立大学をはじめとしてtoeflやtoeicを利用しているのが現状です。
ところで、この「日本留学試験」、長らく「留試」と呼ばれてきました。
漢字圏の学生が長年中心だったため、この漢字の略称がしっくりきてたんでしょう。
ワタクシも、その時代を長く過ごしてきましたので「留試」と呼んでいます。
ここ数年は非漢字圏留学生の増加に伴い、「EJU」と横文字で呼ぶ学生も増えています。
さて、今日は「日本語」について書きたいと思います。
科目内容と配点
「日本語」科目には大きく分けて「記述」と「聴解・聴読解・読解」があります。
「記述」は作文というか小論文で50点満点。
「聴解・聴読解・読解」は400点満点です。
点数の目安
「記述」は平均点が30点と35点の間。国公立大学に合格する学生は最低でも40点ですかね。
「聴解・聴読解・読解」は実施年にもよりますが、平均点はおおむね220点~245点あたりで調整されています。
400点満点ですから5-6割ぐらいですね。
6-7年前は関西でいえば関関同立あたりでも250点あたりがボトムラインで、たまにその点数でも合格できてたのが、コロナ直前ぐらいに大学に聞いてみたら、300点ないと入れなくなってたみたいです。
国公立大学はずっと前から300点でも厳しいくらいでした。
もちろん大学にもよるんですけど……。
漢字圏の学生主体、大学進学主体の学校に勤めていた時は、記述を除いて200点未満なんてほぼお目にかかりませんでした。
たまに180点とかだと「何してたん?」って感じでしたが、非漢字圏主体の学校に移ってからは180点取れたらかなり優秀、150点あたりも珍しくない感じでした。
非漢字圏の学生にとっては「180点の壁」「200点の壁」「平均点の壁」と、3つくらい壁があるんじゃないかというのが、実際教えてみてのワタクシの実感です。
これは、大学で使われる日本語、いわゆる「アカデミック・ジャパニーズ」が漢語及びカタカナ語が中心となってくるため、「漢語にもカタカナ語にも弱い」留学生は点数がとれなくなっているんだと思います。
日本語学校の立場からすれば、学力レベル的に差のない学生が1年~1年半くらいの学習期間で、漢字圏・非漢字圏で差が生じるので、非漢字圏には不利ではないかと思うものの、しかし大学に入学して授業についていけないなら、それも大きい問題です。ですから、いたしかたありません。
昨今は、こういった非漢字圏の学生を専門学校でさらに勉強させて、大学に進学するというコースもたくさん出てきています。
どうやったら高得点が取れるか
日本でいっぱしの大学に入学したいなら、平均点以上はほしいです。
一応、日本語能力試験のN2に相当する留試の点数(記述除く)は200~240点あたりで考えられているようです。
国公立大学や関関同立、関東圏で早慶、MARCHあたりに合格したければ300点は最低でも欲しいです。もしかして300点なくても合格のケースもあると思いますが、やはり最低でも300点は取りたいところです。
みんなの憧れの大学だと350点はほしい、というのが正直なところです。
読解や聴解が中心ですし、問題は4択です。
それで、会話力と留試の点数についてはある程度の相関関係しかありません。
留試で高得点でも会話は苦手、という学生もおります。
一方、普段の会話が流暢でも留試で点が取れるとは限りません。
留試の日本語で点数を取るには「勉強」が必要です。
私の経験では漢字圏の学生で「読解」はたまに最高点を取った学生がいました。
教え方としては、語彙の習得と同時に模試形式の練習をどんどんやっていきます。
いくつか良い教材もあるので、時間をかけてとにかく勉強することです。
不思議なもので「この教材は点数になる」みたいな教材があるので、そういうのをやります。でも、日本語学校でコピー教材を多用することが多いため(著作権を守れ!)、良い教材もどんどん絶版になってます。
下記のこのシリーズはよかったなあ。聴解、聴読解、読解3種類出ていました。現在は古本の価格が高騰しています。
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また、漢字圏の学生は漢字を勉強する時に「聴解でその漢字を脳裏に浮かべることができるか?」という視点で漢字を勉強しておくことです。
日本語も中国語同様「同音異義語」が多いので、その文脈の中でどの漢語かを浮かべることができるかどうかがカギなのです。
「シキンキョリ」なら「至近」
「シキンリョク」なら「資金」ですからね。
文法
留試で出てくる語彙は、大学の授業で出てくるようなものが多いため、ちょっと癖はあります。でも、「これは説明ほしいよなあ」って語彙は、問題の中で説明が加えられるので、しっかりした日本語力があれば大体のところはわかると思います。
使われる文型・文法は大体N2程度です。
N2文法がしっかり入っていれば文型はあまり恐れずともよいと考えていいでしょう。
「べき」「こと」「もの」「わけ」「はず」「にとって」「として」「にしては」「とすると」「限り」「次第」……といった文型です。
進学校では主戦場、そうでない学校では日本語能力試験
そして学生の常套句
とにかく大学入試にチャレンジしたければ、受験料を惜しまず6月、11月に実施されるこの「留試」を受けることです。
「お金がないから6月は受けません」
「まだ復習してないから6月は受けません」
何度このセリフを聞いたことか。
( ̄ー ̄)
しかし、6月の留試を受けといてもらわないと、適切な進学指導は不可能です。
6月の留試の結果を7月の終わりごろに見て、それで志望校を固めて出願書類の準備をしないと間に合いません。
同様の理由で「数学は受けない」「日本語だけでいいですか」もよく聞きます。
とりあえず受けてちゃんと点数を見せてくれないと、どの大学を勧めていいのか判断がつかないので、そこはチャレンジしてほしいな。
大学進学中心でない学校は今も「日本語能力試験合格」を目指している。
大学進学を主目的とした学生が中心の学校は「日本留学試験」で高得点を取ることを目指している。
昨今は日留試に学生の軸足が移ってきていて、そんな学生に日本語能力試験を受験するように言うと
「日本語能力試験は意味ない」
と申します。このセリフも聞き飽きましたわよ!
でも、日本語学校に通ってるうちに受験しとかないと、大学に行っちゃってからでは日能試の合格率は落ちてしまうのです。
大学院に進学する際には日能試N1合格を要件としてるところも多いので、是非ともそっちも合格しておいてほしいものです。
仔羊おばさん