イマドキのパワハラ上司は、いわゆる「パワハラ」なんかしません!
しかし、確かに生息しています。
また、そういう「隠れパワハラ上司」をキープしている企業には、その兆候もあります。
見分ける方法を伝授します。
「パワハラ」は、職権をもとに身体的・精神的攻撃、過大な要求や過少すぎる職務、人間関係を遮断して孤立させる、などの行為です。
みんなの前でどついたり、怒鳴ったりすれば明らかに「パワハラ」です。
イマドキ、そんなパワハラ上司にはそうそう遭遇するものではないでしょう。
しかし、生息はしています。
私が実際に遭遇した「イマドキ・パワハラ行為」を紹介いたします。
1.職場の会議でイチャモンをつけるーマウントを取るー
最初の一人は外国人の新入社員でした。
初めは、会議で少しその社員がぼーっとしている時に、「今、何を話したか」と詰問し、答えられずまごまごさせ、「ちゃんと会議の時にはメモを取るように」と、比較的普通の指導が行われました。
しかししばらくすると、日本語がそんなにできる社員でもなかったのに、その上司は会議の書記をさせました。「過大な要求」に近いですが、全くできないわけでもないので、すれすれです。
当然というべきか、その社員が書いた議事録には聞き間違いも誤解もありました。それについて責めたりしました。
間もなく、この社員は「仕事ができない」ということで別部門に飛ばされ、しばらくして退職しました。
次に「事務長」として日本人が雇われました。会議の議長をするように、という命令がくだんの上司からされ、事務長は会議議題をまとめて会議になりました。
その最初の会議が始まる時、上司はその議題をまとめたプリントになにやら文句を言いました。私もその場にいたのですが、これまでの経験でそのプリントには一切の問題がありませんでした。全くのいちゃもんでした。
事務長は、意に介せず大人の対応で一応「そうですか、以後気をつけます」で会議は始まりましたが、その後も会議の度に上司は事務長を叱責することが続きました。その事務長は半年ほどして辞めました。
次に会議の議長をするように指示を受けたのは私でした。まず最初のときに、会議レジュメを準備していかなかったので、怒られました。しかし、かの「事務長」を除き、それまでレジュメを準備してないという理由で叱られたスタッフは一人もいませんでした。その後、私は必ずレジュメを準備し会議に臨みましたが、他のスタッフはそういうことでは注意を受けることもありませんでした。
2.「目をつけて」居づらくさせる
その社員は、採用時に全員が一致して入社を推した社員ではなかったが、この上司の「鶴の一声」で入社となった。にもかかわらず、2か月くらいで「あいつは挨拶をしない」と批判をし始め、全員が集まって全体会議の時、「メモをとっていない!」などとこれまた言いがかりをつけ、みんなの前で怒鳴りつけた。(実際にはメモをとっていた。そのメモをその社員は見せてくれた)
…このように「皆の前で怒鳴りつけた」のは、パワハラ上司の素顔が表れた一瞬である。
3.自分に刃向かう可能性が「ゼロ」だとパワハラ全開
その上司の監督部門の中に「日本語学校」がある。
技能実習生と、留学生に日本語を教える部門がある。
「規律訓練」と称し、技能実習生にも留学生にも入学してくると
「起立!礼!着席」の練習をさせる。
大体、20~40人くらいの学生や実習生が全員、びしっと同じタイミングできちんと揃うまで30~40分、その訓練をやり続ける。
うまくできないとものすごい大声で怒鳴りつける。
「もう一回!」
「遅い!」など、確かになじるような言葉はないものの、来日してそんなに日本語が流暢でない学生に対してだとパワハラ全開。もちろんこの時も、スローモーな学生や、一言言いそうな学生を狙い、徹底的にマウントしていたことは言うまでもない。
私はドアの陰から初めて見た時、本当に血が凍りついた。皆が言っていたのはこれだったのか!「すごい」とは聞いていたが…
これを見ても辞めないスタッフは、逆にどうなんだろう?と思った。
辞めた同僚が、「あれって『同化政策』ですよね?」と…。
「同化政策」!
戦前ですよ!
そして、この「起立、礼」を、授業間の休み時間にもしろ、そして、
「これだけはちゃんとやってほしい、頼む」
「挨拶(それ、挨拶?)は最も大事だから、徹底してください。よろしくお願いします」
と繰り返されました。
どこかの専門学校の方も、「面接は最初の挨拶が最も大事だ」とこの上司におっしゃったらしく…。
この「起立!礼!」が学校の一番大事な教育、という位置づけであることが、何よりこの上司の「パワハラ星人」さを象徴しています。
そして、この「規律訓練」は、外国人になされてるところが「キモ」です。
自分を訴えたりする可能性がない者を対象にしています。
イマドキの「パワハラ星人」のやり方はとても巧妙です。
日本人なら、自分の立場が危なくなるのでやらないのです。だから、新入社員にはこの規律訓練はしません。
こんな上司を改心させるのも部下の責任かと思い、様々私も考えました。
例えば、上司の、更に上司に訴える…
例えば、同僚みんなで一致団結して意見を申し入れる…
しかし。
4.創業者も部下をつるし上げる会議を本社でやっている。
5.とある部署全員が退職した。
6.この上司の部門で退職が相次いでいるにも関わらず、全てそのまま放置
こういう事実があれば、それはひとり上司だけが特殊なのではなく、その企業自体に問題があるとみてよいでしょう。また、
7.外国人社員(や、異文化を持っている社員)が異口同音に「この上司はだめだ」と言う。
のも、バロメーターの一つです。どっぷり企業文化に浸かっている者には見えない視点を持っているからです。
こういう企業や上司が、早く方向転換をして、普通になってくれればよいのですが。
ワタクシは、この上司に、辞める時、
「上司さんもあまり嫌われないように」と申し上げたら
「それがわたくしの役目ですから」と答えていました。
そう、会社のため、わざと憎まれ役に徹している、というのがこの上司のスタンスです。
ネットで見ても、部下に指導をして伸ばす上司は「部下の退職は恐れてもしかたがない」というように書いてあります。
とはいえ、1年に3人も4人も辞める、というような場合、やはり異常性を疑ったほうがよい。
特に、同様の現象が繰り返し表れていたなら、一考の余地はあると思われます。
最後にもう一度書きますが、イマドキのパワハラ上司は、はっきりそれとわかるパワハラ行為をするわけではありません。
巧妙にパワハラ行為をセーブし、対象を絞り、うまくやります。
上記の上司も、無理な残業の強制はしませんし、部下たちのことは心から愛情を持って接している(つもり)なのです。
それが「部下を成長させ、最後には感謝してくれる」と信じています。
実際、そのように感謝の念を持つ者もいた、という美しい過去があるのだと思われます。
ただ、一歩立ち止まって考えてみましょう。
高校のスポーツ系の指導者でも、厳しい指導は存在するでしょう。
ただ、次から次へと部員が辞めていくなら、その指導には「問題ない」と言えるでしょうか。
企業の場合、ある程度「クビ」を覚悟しないと「上司の方針にモノ申す」とはなりません。また、そういう波風を立てるほどのエネルギーを持てるほど、余裕しゃくしゃくに働いている社員もそんなにはいないでしょう。
「訴訟」も一つの方法ですから、私もこの上司の行為は、できるだけこまめにメモを取るようにしていました。
いつも「すみません」と謝っていては、こういう上司の思うつぼです。
See you in court !
(法廷で会いましょう)
くらい言っていい加減です。
が、実際、そんな手間ひまかけるなら、転職したほうが手っ取り早いですよね。
仔羊おばさん