1980年、モスクワでオリンピックが開催されました。
そう、西側諸国がボイコットし、日本の選手も涙ながらに不参加となったオリンピックです。マラソンの瀬古選手や柔道の山下選手が出場できなくなりました。
今年はコロナで、東京オリンピックの開催に反対する声も大きく上がっていました。でも、モスクワの記憶が残っている選手がいる限り、きっと中止はないだろうと予想していました。
モスクワオリンピックのマスコットは子熊のミーシャちゃんでした。
このミーシャちゃんが、オリンピックの閉会式で涙を流します。
ニコニコ動画がありましたので、貼っておきます。
ミーシャちゃんの涙は、ほんの一瞬です。
その一瞬の涙が、私の心から離れることはありませんでした。
オリンピックの度に、どこかの国が「オリンピックのボイコット」をにおわせる度に、そして「TOKYO2020」開催の間もです。
何度もフラッシュバックしました。
閉会式の時のこのミーシャちゃんの涙ですが、演出としては:
あーもうオリンピックが終わっちゃうね。
せっかく友達になれたのにお別れだね。
寂しいね。
また会えたらいいね……。
という演出だと思います。
でも、その後、1984年のアメリカ・ロス五輪では、今度はソ連(当時)はじめ東欧諸国がオリンピックのボイコットをします。
それで、今見ると、ミーシャちゃんの涙は、とても深い意味をついつい読み取ってしまいます。
それは、一番の好敵手であったアメリカ不在の大会について……
モスクワではアメリカの不在
オリンピックでは、アメリカ、ソ連共に強豪国です。常に金メダルの上位を占める二つの国。
その一国が欠けてしまうことで、この二大会の金メダルの価値が、少し、ほんの少し落ちてしまう。
例えばロスアンゼルスオリンピックで日本は銅メダルを獲得していますが、しかしもしソ連が参加していたら……というような問いが、どうしても心に浮かんできてしまいます。
だから、ミーシャちゃんの涙の中に
アメリカちゃんのいない大会なんて、なんだか拍子抜けだったよ……。
来てくれたらよかったのに……。
確かに強敵だけど、競い合いたかった一番の敵は君だったのに……。
というような「ライバル不在」を嘆く気持ちを見てしまうのです。
まだあります。
その後、1984年のロスアンゼルスオリンピックでは、今度は東欧諸国がボイコット。再び真剣にオリンピックに向けて命をかけていた選手たちが涙をのむこととなりました。
そこでミーシャちゃんの涙は、
どうして僕たちは争ってしまうのだろう……。
どうしてオリンピックのボイコットなど愚かな選択をしてしまうのだろう。
ボイコット合戦をして、平和が実現するならまだしも、終わりのない戦争、紛争。なぜ?
本当に試合を競い合いかった相手は一番強いライバルなんだよ……。どうしてそれに気づかなかったのかな?
という根源的な問いかけに見えてしまいます。
本当に、ちょっとした演出だったはずです。
でも、今見ると「演出以上の深さ」を、その涙の中に見てしまいます。
アメリカのアフガン撤退に今一度思い出した。
仔羊おばさん