今日から時々、このテーマでブログを綴って行こうと思う。
二つとも日本に来た外国人、あるいは日本語を習っている外国人向けの試験だ。
日本社会にも海外から来た方々は増えているし、「隣人理解」の一環となればと思い、このテーマで書くことを思いついた。
日本語教育業界を目指す方には参考になるだろう。
そうじゃない方は、上記の「隣人理解」の一助くらいにさっと見ていただければと思う。
名は体を表す
日本語の能力を測る試験が日本語能力試験。
日本の大学などに進学するのにその学生の学力を測るのが日本留学試験だ。
それぞれ、ちゃんとしたサイトがある。
「ちゃんとしたサイト」ご紹介
詳細は上記を丹念にご覧いただけば、最も正確な情報が入手できるので、このブログでは、もうちょっとユーザー目線というか、長年この2つの試験の受験指導をしてきたワタクシの目線でこの二つについて、書いて行ってみようと思う。
科目
日本語能力試験は、クラス(級)によるが主に
聴解
読解
言語知識(語彙、漢字、文法)の3種
日本語 記述(日本語によるちょっとした小論文)、聴解、聴読解(手元にある図表や日本語文を読みながら聴解問題に答える)、読解 の4種類
ほかに 数学、理科、総合(「社会」科目と捉えるといい)がある。説明はちょっとややこしい話になるので、また後日にする。
時期
能力試験は7月、12月の第一日曜
留学試験は6月、11月の第二か第三日曜
何のための試験か/内容など
その方の日本語能力を全般的に測る試験で、かつては「1級」「2級」という級分けされていた。今は「N1」「N2」などというクラス分けに変わった。なぜ変わったのかに関する公式的な説明は上記サイトで丹念に読んでもらえばわかる。
このブログでは、私が「〇級」から「N〇」に変わる時点で行われた日本語学校教員向けの公式的な説明会で聞いた知識をもとに、教員目線で後日のブログで語ろうと思う。
聴解力、読解力、語彙や漢字、文法力、ある種のコミュニケーション力を測る向きもある(これについては異論を持つ教師もいるだろう)。
イメージ的には英語のTOEICが近い。
ただ、TOEICが一つの試験でその人の英語力を測るのに対して、日本語能力試験は「N1」「N2」「N3」「N4」「N5」それぞれ異なる試験を受け、合否を出す。
総合的な日本語の試験ゆえ、聴解でも夫婦の会話や親子の会話、店で買い物する時の会話、天気予報、テレビ番組風な内容など多岐に渡る。読解もしかり。
主に大学進学をにらんでの試験、というのが日本留学試験の最大の特徴だろう。
それゆえ「数学」などがあるのだ。
そして、「日本語」の試験でも、大学で先生が授業をしている風な問題、専門科目の入門編、というような内容が多い。「聴読解」という、パワポや資料、写真や図を見ている風な問題があるのも、大学などに入学しても大丈夫かどうかを測っているためだと考えられる。
「アカデミック・ジャパニーズ」すなわち学術的な日本語の試験、それが留試です。
ちなみに試験そのものの時間も、留試はかつては今より長時間だったのだが、当時我々教員は「あれって授業時間中の集中力がもつかどうかもテストしてるよな」と言っていた。現在、時間が短くなったと言ったって「日本語」の試験時間は125分。
点数が妙にふるわなかった学生に理由を尋ねると「試験中寝た」学生は珍しくない。
はい。
(-ω-)/
授業中寝ちゃう学生は大学には不向きということですわよ
日本留学試験は、日本人が大学受験で受ける「センター試験」に相当するもの、英語ならtoeflに相当するもの、という位置づけの試験だと思えばよい。
受験者
日本語能力試験は受験者数、受験者の層、実施している海外の国、その他もろもろ、とにかく様々な日本語学習者が受ける試験である。
日本の大学院や専門学校に入学を希望する人から、日本で働きたい人、市井の学習者、日本語学習を始めたばかりの人、アニメで日本語を覚えたという人、日本に居住してうん十年、と言う人まで誰でもが受けている試験。
日本留学試験は、日本で大学に進学したい人にほぼ限られる。海外でも実施しているけれども、実施国は日能試より少ない。
問題形式
二つともマークシート方式です。
ただし、日本留学試験の日本語の「記述」科目は作文というか小論文であるため、本当の「記述式」です。30分で文字数400~500で書きます。
「不正」のにおい
これは、ワタクシの肌感覚と申しますか、見聞きした範囲内で書きます。
「雑記ブログ」ですので、「雑記」と思ってください。「統計」ではありません。
ウラを取っていません。「雑記ブログ」ならではの記載です。
受験者が多いせいなのか、日本語能力試験のほうが「不正」を感じることが多かったです。
( ̄ー ̄)
まず、学生の日頃の実力を熟知している教師が複数、「あの学生の合格は何かの不正以外には考えられない」というケース。これは能力試験のほうで何回か経験があります。
海外でも日本国内でも経験があります。どんな方法かはわかりませんが、昨年以降は「コロナ」によるソーシャルディスタンスが厳守されてますので、目視によるカンニングはできなくなってるはずです。バンザイ!
また、試験の翌日に非公表のはずの問題がネットに流れる……
( ̄д ̄)
これも日能試で毎年、学生がご丁寧に教師であるワタクシに見せてくれます。
「先生、この答えなんですか?」って。
……必ず、某国のサイトです。あえて国は公表しますまい……。(*_*)
業界内の方なら「某国」わかるでしょ。
わからない方は「日本留学試験」の海外実施国をご覧になって考えてください。
実施国以外の国のどれかですわよ💛
留試の方では、「え?写真の顔が違う…」というのが1回ありました。受験票の写真がどこからどうみても本人と違うというやつです。「替え玉」というやつです!
これは、テスト会場の現場の人間が何をやっておるんじゃ!
と、思ったものです。もう10年くらい前の話ですから、今はもうそんな隙はないと信じてます。
点数の取りやすさ
一応、留試も能試も「語彙の制約」というのはない、ということになっています。
しかし、能試は自分に合ったレベルの試験にトライすることになりますから、最上級である「N1」以外は、段階的に易しくなっていきます。「N4」「N5」あたりになるとかなり簡単です。語彙的にも超易しいです。曜日とか。
不合格になるってどういうことなん?と言いたいが、そのレベルの学生は、性格がいいのかうまくひっかかっていますね。(*'ω'*)
まあ、能試の方が点が取りやすい印象があります。
N3,N2と上がるうちに能試も難しくなっていきます。
一応、N2合格で留試の日本語400点満点の200~240点あたりの位置付けになります。多くの専門学校や大学が、ほぼそのように解釈して出願資格に使っています。
ただ、これもワタクシの経験と肌感覚でものを言わせてもらいますが、それは受験者が漢字圏(+韓国)だった場合のことであって、非漢字圏の場合、N2合格者でも留試の日本語は160点~220点程度がほとんどでした。
留試はアカデミック・ジャパニーズですから、漢語に強い漢字圏はやはり有利に働いていると思います。とはいえ、カタカナも多いわけだし、非漢字圏でも学術的に能力の高い学生は、漢字圏の学生に遜色ない点が取れたりはします。
学生のレベルにもよる、ということです。
ただ、総じていうと留試は非漢字圏は苦戦することが多いです。
日本人が受けたら
さて、日本人が受けたら何点くらいとれるの?ってことです。
ワタクシの答えは、
日本語能力試験のN1(一番レベルが上のやつ)
ともに、きちんと準備して、眠くない状態で、かつ集中できる環境で受験すれば両方とも満点が取れます。
ただ、能試N1あたりは、新人日本語教員とか「初めてやってみました」みたいな人はよく、「いやーN1って難しいですねえ。わからんやつありましたわ」って言ったりします。
それから、留試は「アカデミック・ジャパニーズ」というやつなので、やはりちょっとした学問の入門書レベルがさくさくっと読めて、大学の一般教養の講義が大体わかるってレベルの教養は必要です。
まあ、私などは何年も教えてきてるので、条件が揃えば満点が取れます。
留学生対象の試験の特徴として、「答えは必ず本文中にある」ので、日本語ネイティブでそこそこ教養のある人なら満点がとれるようになっています。また、そうでないとおかしいです。
解答に関してネイティブ受験者間で「論議が分かれる」ような問題は、いかなN1といえど、留試と言えど、良質の問題とはいえないのじゃないですかね。
それが許されるのはネイティブの「国語」の試験だと思います。
どっちが面白いか
「トリビア」的な面白さは断然日本留学試験です。「交通渋滞が起こらないようにするにはどうしたらよいか」や「原子力発電のしくみ」や「この地球上のどっかにいる鳥の好みの食べ物」など、知ってるとちょっと自慢できるネタが多いのです。
日本語能力試験だと「二人が選んだプレゼントはどれとどれか」とか「天気はこれからどうなっていくと言っていますか」とか「男の人はどのパソコンを買いましたか」
「筆者が最も言いたいことは何ですか」「この文を書いた人はどうして何も言わなかったのですか」みたいな問題ですから……。
文法
日本語能力試験は、問題非公表ですので、これも正確には比較できません。よってまたまたワタクシの肌感覚及び、日能試の過去問が公表されていた時代のワタクシの比較研究により言わせていただきます。
雑記ブログ
雑記ブログ!
(-ω-)/
日本語能力試験は難易度によりクラス分けされています。生の日本語に近い文になるとN2かN1あたりです。
N2文型で典型的なものというと
こと もの べき はず わけ ものだ ばかり 限り によって にとって として ……などなど、いわゆる「機能」はあるが「意味」とは言い難い言葉がそれこそ「どばっ」と出てきます。
日本留学試験は、「アカデミック」になりますので、名詞はそれこそすごい数出てきますが、文型は分析してみるとN2程度のものがほとんどです。特に、説明するような言葉が多いため、「この〇〇は~ということです」という言い換え文などは多々出てきます。「べき」も多用されます。
日能試はエッセイなどの文も使われるので、N1、N2あたりになると擬音語擬態語や、気持ちを表す言葉や種々の場面で使われる微妙な表現が含まれてくるため、文型もそう単純ではありません。
ですので、より多くの文型を学習しないといけないのは日本語能力試験のほうだと言えます。
珍しく長く書きましたので疲れました。ふう!
(∩´∀`)∩
また時々続きを書きます!
もしご質問ありましたら、どしどしお寄せください!
お答えします!
仔羊おばさん